第1回沖縄平和賞受賞者(2002年)中村哲を支援するペシャワール会
贈賞理由
中村哲を支援するペシャワール会(以下「ペシャワール会」という。)は、中村哲医師のパキスタンとアフガニスタンでの医療活動を支援するために1983年に設立され、その活動は現在までに18年余にも及ぶ。内戦・社会不安など言語に絶する厳しい環境の中、誰も行かないところに行く、他人のやりたがらないことをやるという信念をもって、非暴力を旨として幾多の困難を乗り越えて無私の奉仕を続けている。
「思想・信条にとらわれず「支え合い」の精神で一致して会を運営する」ことを方針とし、また、現地では政治、民族、宗教、言葉などに関わりなく平等に活動することを使命としてきた。このことにより、内発的多様性を基礎とした平和実現の促進に貢献した。
ペシャワール会の献身的な活動に共感する輪は全国に広がり、約8,000人の会員からなる組織に発展した。会の財源は会費や寄付で賄われ、専従スタッフを持たず、組織運営のための予算を最小限に抑えて、そのほとんどが現地のために使われている。これはNGOの理想の姿ともいえる。
1986年にはアフガニスタン難民救済のためのプロジェクトを立ち上げ、現在、パキスタン・アフガニスタンで1病院と4診療所を運営し、年間約30万人の患者診療を行っている。
大干ばつに見舞われたアフガニスタンでは、飲料水は不足し、感染症が流行し多くの尊い命が奪われ、廃村が広がっていくという悲惨な状況になった。ペシャワール会はこの事態に迅速に対応し、2,000カ所を目標に井戸を掘るなど水資源確保事業を展開して数多くの人々の生活を救い、難民化を防いだ。
日本国内においては、主として現地の活動を支援するために、募金活動を行っている。特に、巨大な難民キャンプと化したカブール等において、厳しい冬の寒さと飢餓に瀕する人々のためのプロジェクト「アフガンいのちの基金」を設立し、食料援助に尽力した。また、アフガニスタンの人々の生活について情報を提供し、国際理解に貢献したことも注目に値する。
ペシャワール会は、医療並びにプライマリー・ヘルス・ケアの実践等を通じて平和と人間の安全保障に貢献し、貧困など社会不安の中にあって人間の命の救済と基本的権利の確保のために尽くすことにより、普遍的な平和への意識を喚起することに成功した。同時に、アジアにおける日本市民のボランティア活動の可能性を早くから効果的に示し得た。
アフガニスタンの復興に向け、これまで継続してきた医療活動・水源確保事業に加え、新たに農業再興プロジェクト、寡婦を対象とする自助援助、道路整備など幅広い活動を通してアジア太平洋地域の安定に貢献することが期待できる。
ペシャワール会の献身的な努力は、今後とも国内外から多くの共感と永続する指示を集め、平和を築く大きな力となっていくものと確信する。
沖縄平和賞選考委員会は、ペシャワール会のこれまでの実績を高く評価した。沖縄はかつて、琉球王国時代、「万国津梁」いわゆるアジアの国々をつなぐ懸け橋として活躍した時代があり、また、多様なものを受け入れる寛容さや相互扶助の精神、未来を創造するたくましい県民性がある。ペシャワール会の活動は、沖縄県の持つ歴史的、文化的特性等を反映して恒久平和の創造に貢献するものとして創造された沖縄平和賞の趣旨に通ずるものである。
よって、戦前戦後の困難な時代を経て発展してきた沖縄県から、今後の活動を支援していくために、第1回沖縄平和賞をペシャワール会に贈ることを決定した。
沖縄平和賞選考委員会
江崎玲於奈(芝浦工業大学学長)委員長
尚弘子(放送大学沖縄学習センター所長)
森田孟進(琉球大学学長)
海老沢勝二(日本放送協会会長)
グレゴリー・クラーク(多摩大学名誉学長)
武者小路公秀(中部高等学術研究所所長)
猪口邦子(軍縮会議日本政府代表部特命全権大使)
肩書は当時
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