第3回沖縄平和賞受賞者(2006年)沖縄ラオス国口唇口蓋裂患者支援センター
贈賞理由
沖縄・ラオス国口唇口蓋裂患者支援センターは、沖縄県内の開業歯科医師を中心に1995年に設立されました。琉球大学医学部歯科口腔外科教室と連携し、ラオス国を中心とした東南アジア諸国での医療支援活動や治療技術の移転など多くの事業を展開しています。
沖縄の歴史を振り返ってみますと、琉球王国時代の1689年に高嶺徳明が中国福州で習得した補唇術により第2尚氏第12代尚益王の口唇裂を治癒させ、その後薩摩藩医に伝授したとされています。しかしながら、沖縄はさる大戦において地上戦の場となり、20万人余の尊い人命が失われ焼土と化し、歯科医療も壊滅状態となりました。戦後は、厚生省医師派遣制度等による医療支援によって支えられていました。
今日、我が国においては、医療技術や医療制度の確立とともに口唇口蓋裂患者は誰でも治療を受けることができるようになりましたが、近隣のアジア諸国では、適切な時期に充分な治療を受けられない子供たちが大勢おり、その病状からいわれのない差別を受けております。
同支援センターは、沖縄県の歯科医療技術の向上した今こそ、困っている人々の役に立ちたいと、2001年から日本口唇口蓋裂協会の協力を得て、最貧国であるラオス国で活動を展開しています。これまでに口唇口蓋裂患者に対して多数の無料手術を行い、現地の医療スタッフに対する技術移転や歯科医療用器具の贈呈を行っています。また、児童歯科保健指導のプロジェクトを積極的に推進しています。
これらの活動は、口唇口蓋裂により生活に支障をきたし、社会的に差別を受けている人々に希望を与えるとともに、社会参加を促進しています。
ラオス国は未だ内戦の痛手から復興しておらず、同じように戦争の被害を受けた沖縄から、このような支援を行うことは、沖縄の歴史と風土に培われた相互扶助の精神を表すものであります。
今後同支援センターが、ラオス国の口唇口蓋裂患者に対する医療支援を広げ、その努力がきっかけになってラオス国の医療技術が確立されるとともに、学術交流等を通して沖縄とラオスの友好関係が深まることが期待されます。
沖縄平和賞委員会は、沖縄を起点にアジア太平洋に拡がる歯科医療活動をとおして、人間の安全保障の促進に貢献している同支援センターを第3回沖縄平和賞に最も相応しいものと評価しました。
同支援センターの活動の根底にある相互扶助の精神は、沖縄県の持つ歴史的、文化的特性等を反映して恒久平和の創造に貢献するものとして創設された沖縄平和賞の趣旨に通ずるものであります。
よって、国内外からの暖かい支援を受け戦後の廃墟と混乱から立ち上がり発展してきた沖縄県から、今後の活動を支援していくために、第3回沖縄平和賞を沖縄・ラオス国口唇口蓋裂患者支援センターに贈ることに決定しました。
沖縄平和賞選考委員
- 委員長 有馬朗人(財団法人日本科学技術振興財団会長)
- 副委員長 尚弘子(琉球大学名誉教授)
- 蒲島郁夫(東京大学法学部教授)
- グレゴリー・クラーク(多摩大学名誉学長)
- 永井多惠子(日本放送協会副会長)
- 武者小路公秀(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長)
- 森田孟進(琉球大学学長)
肩書は当時
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