要請事項の内容及び説明(日米地位協定)

ページ番号1017259  更新日 2024年1月11日

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1.第1条関係(軍隊構成員、軍属、家族の定義)

現状と課題

  1. 平成29年1月、軍属に関する補足協定が締結されました。
  2. 補足協定締結により、コントラクターの被用者についての通報・見直し等により、透明性が向上するとされています。しかし、日米合同委員会で合意されたコントラクターの被用者の見直しの進捗状況や軍属に関する定期的な報告等の内容について公表されるか明らかではありません。
  3. 軍属の総数等が毎年米国政府から日本政府に報告されますが、地方公共団体に提供する予定は明らかではありません。
  4. 補足協定締結により、日米地位協定の対象となる軍属の範囲が明確化されるとされていますが、施設及び区域内にある企業等で働く、軍属の対象とならない者が事件を起こした場合で、施設及び区域内に逃げ込んだときの逮捕又は身柄引渡しが適切に行われるか、疑問が残ります。

沖縄県の考え方

  1. 軍属の補足協定第5条及び日米合同委員会で合意されたコントラクターの被用者の見直しの進捗状況や軍属に関する定期的な報告等の内容について日米両政府が公表することが重要です。
  2. 地方公共団体にとって、居住する米軍構成員及び軍属並びにそれらの家族等の人数などの情報は、基地対策を含む行政施策の基礎となる重要な情報であるため、米軍構成員及び軍属並びにそれらの家族の総数等や軍種別、市町村別の内訳などの詳細な情報は、地元地方公共団体に提供される必要があります。
  3. 施設及び区域内における日米地位協定の対象とならない者の逮捕等は、確実に行われる必要があります。

沖縄県の要請

  1. 日米両政府により締結された軍属に関する補足協定については、その運用について透明性を確保するため、同協定第5条で定める通報及び軍属に関する定期的な報告等の内容に関する情報を公表すること。
  2. 米軍構成員及び軍属並びにそれらの家族の総数等や軍種別、市町村別の内訳などの詳細な情報を、地元地方公共団体に提供すること。
  3. 軍属の範囲の明確化が、施設及び区域内における日米地位協定の対象とならない者の逮捕等に影響を及ぼすことがないよう配慮すること。

2.第2条関係(施設及び区域の許与、決定、返還、特殊使用)

現状と課題

  1. 辺野古新基地建設が、地元地方公共団体の意向に反して強行されているように、施設及び区域の提供、運用、返還等に関して最も大きな影響を受ける周辺地域の住民や地元地方公共団体の意向が反映できるような仕組みが設けられていません。
  2. 平成18年1月、嘉手納町民及び三連協が、嘉手納基地使用協定に関する町民会議を立ち上げ、多発する基地被害の除去軽減緩和のため、日本国と米国との基地使用協定の締結を求めています。

沖縄県の考え方

米軍基地から派生する諸問題の解決を図るためには、米軍基地と隣り合わせの生活を送っている周辺地域の住民や地元地方公共団体の理解と協力を得ることが不可欠です。

沖縄県の要請

  1. 日本国政府及び合衆国政府は、施設及び区域の提供又は用途の変更、施設及び区域内における埋立て、大規模な土地の形状の変更、大規模な工作物の新設又は修繕等を行う計画がある場合は、関係地方公共団体と協議し、その意向を尊重する旨を明記すること。
  2. 日本国政府及び合衆国政府は、日米合同委員会を通じて締結される個々の施設及び区域に関する協定の内容について、関係地方公共団体から、住民生活の安全確保及び福祉の向上を図るため要請があった場合は、これを検討する旨を明記すること。
  3. 日本国政府及び合衆国政府は、前記の検討に際しては、関係地方公共団体の意見を聴取し、その意向を尊重する旨を明記すること。また、施設及び区域の返還についての検討に際しても、関係地方公共団体の意見を聴取し、その意向を尊重する旨を明記すること。
  4. 日米合同委員会を通じて締結される個々の施設及び区域に関する協定には、施設及び区域の使用範囲、使用目的、使用条件等を詳細に記載するとともに、その内容を日本国政府が定期的に審査する旨を明記すること。

3.第3条関係(施設及び区域内外の管理)

現状と課題

  1. 地方公共団体による施設及び区域内への立入り(平成8年12月)について、施設及び区域への立入許可手続が整備、実施されています。しかしながら、平成25年8月にキャンプ・ハンセン内で発生したHH-60ヘリコプターの墜落事故の際の事故現場の環境調査は、平成26年3月まで実施が許可されないなど、県が求める速やかな立入りが実現していません。また、平成28年1月、嘉手納飛行場に隣接する比謝川などで高濃度のPFOSが検出されました。サンプリング調査のため嘉手納飛行場への立入りを求めましたが、平成29年3月現在、認められていません。
  2. 事件・事故発生時の通報手続(平成9年3月)について、公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件・事故発生時における通報手続が整備、実施されています。しかしながら、施設及び区域内で発生する燃料漏出等について、平成22年から平成26年まで計206件発生していますが、日本側に23件しか通報されていないとの報道がなさました。通報するかどうかについては、米軍の判断に委ねられています。平成27年9月、普天間飛行場で約950リットルのディーゼル燃料が漏出した事故では、通報が2日後でした。速やかな通報がなされていません。エ施設及び区域内で事故が発生した場合、地元地方公共団体や地域住民にとっては、情報提供がないとその事故について把握できず、その結果、対策を取ることもできない可能性があります。
  3. 国内法の適用について、米軍の諸活動の実施に関しては、米軍施設・区域内のPCB等廃棄物の処理等について国内法の適用が除外されるなど、事故の危険性や環境汚染被害等に対する県民の懸念があります。
  4. 訓練・演習の実施にあたっては、沖縄防衛局を通じ文書で事前に通報が行なわれていますが、その中には訓練・演習の内容や、実施時間など詳細についての情報は記載されておらず、住民は大きな不安を抱えています。
  5. 牧港補給地区の環境汚染の報道について、牧港補給地区については、その周辺に生息するハブから高濃度のPCBなどが検出されたとの報道がなされ、また、平成27年9月、昭和47年から昭和61年までにかけて発生した油や有害物質の流出事故等の環境汚染に関する米軍文書が公開されています。関連があるか事実関係は明らかでないため、積極的な情報公開が必要です。
  6. 環境補足協定(平成27年9月)について、日本の当局が次の場合に適切な立入りを行えるよう手続を作成・維持することとされました。
    (ア) 環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合
    (イ) 施設及び区域の返還に関連する現地調査(文化財調査を含む。)を行う場合 県が要望していた、少なくとも返還の3年以上前からの立入調査の実現が盛り込まれていません。また、環境補足協定に基づく立入りの手続きが明確になっていないため、米軍施設・区域における文化財調査等の現地調査が実施できていません。返還が合意されている普天間飛行場において、これまで行われていた文化財調査は、環境補足協定に基づく手続によることとなったとして、中断しています。

沖縄県の考え方

  1. 住民の安全安心を守る立場から、地元地方公共団体の職員が現況を把握する等のため施設及び区域内への立入りを求める場合には、これに速やかに応ずることが必要です。
  2. 公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件・事故については、適時・的確な情報公開により住民の不安を払拭するため、速やかで適切な情報提供や適切な措置の実施について、明記することが必要です。また、現行の通報手続において通報対象から除外されている事件・事故についても、更なる検討が必要です。
  3. 航空機騒音や事故の危険性を軽減するため、ドイツの例にならい、米軍機にも日本国内法を適用させる必要があります。
    《参考》ドイツにおいては、ボン補足協定に基づき、NATO軍の演習・訓練に対しても関連するドイツ国内法が適用されることになっているが、その国内法において適用を除外する規定があると言われており、実際の運用について明らかではない。
  4. 住民の不安を軽減するためにも、演習・訓練の実施にあたっては、その具体的内容について事前に公表がなされる必要があります。
  5. 深刻な環境被害が発生する前の未然防止の観点から、環境保全に関する日本国内法を適用させ、また、施設及び区域における計画の策定に際し、環境等への影響の調査等を行うとともに、環境汚染が発生した場合には合衆国が適切な回復措置を執る必要があります。
  6. 環境補足協定については、これまで基地を抱える地元地方公共団体が求めてきたことが実現されることが重要であり、実効性のある運用がなされる必要があります。

沖縄県の要請

  1. 合衆国軍隊は、施設及び区域が所在する地方公共団体に対し、事前の通知後の施設及び区域への立入りを含め、公務を遂行する上で必要かつ適切なあらゆる援助を与えることや、緊急の場合は、事前通知なしに即座の立入りを可能にする旨を明記すること。
  2. 航空機事故、山火事、燃料流出等合衆国軍隊の活動に起因して発生する公共の安全又は環境に影響を及ぼす可能性がある事件・事故については、速やかに関連する情報を関係地方公共団体に提供するとともに、地域住民にも速やかに情報提供を行うことや、災害の拡大防止のため、適切な措置を執る旨を明記すること。
  3. 合衆国軍隊の演習、訓練、施設整備等の諸活動の実施に対して、航空法等の日本国内法を適用する旨を明記すること。
  4. 合衆国軍隊が行う訓練・演習については、その内容が把握できる具体的かつ詳細な情報を関係地方公共団体に事前に通知するとともに、地域住民にも速やかに情報提供を行う旨を明記すること。
  5. 下記の内容の環境条項を新設する旨を明記すること。
    ア 合衆国は、合衆国軍隊の活動に伴って発生するばい煙、汚水、赤土、PCBを含む廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有するものとする。また、日本国における合衆国軍隊の活動に対しては、環境保全に関する日本国内法を適用するものとする。
    イ 合衆国軍隊は、施設及び区域における全ての計画の策定に当たっては、人、動植物、土壌、水、大気、文化財等に及ぼす影響を最小限にするものとする。また、当該計画に基づく事業の実施前に、及び実施後においては定期的に、当該事業が与える影響を調査し、予測又は測定し、評価するとともに、調査結果を公表するものとする。さらに、日米両政府間で、当該調査結果を踏まえ、環境保全上の措置について協議するものとする。
    ウ 合衆国軍隊の活動に起因して発生する環境汚染については、合衆国の責任において適切な回復措置を執るものとする。そのための費用負担については、日米両政府間で協議するものとする。
  6. 日米両政府間で締結された環境補足協定については、同協定が実効性のあるものとなるよう努めるとともに、次の内容に配慮すること。
    ア 事故や環境汚染が確認された場合には、関係する地方公共団体の速やかな現場立入りや試料採取を含む合同調査が可能となるよう環境補足協定の運用に努めること。また、日本国政府または合衆国政府が行う環境調査や汚染除去の過程を、事前に関係する地方公共団体に説明すること。さらに、関係する地方公共団体が必要と認める場合は、汚染除去後、確認調査及び一定期間のモニタリング調査を可能とすること。
    イ 返還前の土地の立入りについては、返還後の跡地利用が円滑に推進されるよう、日米安全保障協議委員会又は日米合同委員会の返還合意後、極力早期に、少なくとも返還の3年以上前からの立入調査を可能とすること。また、これまで行われていた文化財調査が、環境補足協定に基づく手続によることとなったことにより中断していることから、関係地方公共団体による文化財調査等が円滑に実施できるよう、環境補足協定による立入りの手続きを明確に定めること。
    ウ 文化財の発掘調査に伴い、環境汚染や遺棄物等が発見された場合、上記アに基づき調査等を実施すること。また、発掘調査の安全性を確認するための調査を実施すること。

4.第4条関係(施設及び区域の返還、原状回復、補償)

現状と課題

  1. (1)支障除去措置等について、返還後の土壌汚染等の発見事例があります。
    (ア)平成15年3月に返還されたキャンプ桑江から、基準値を超える特定有害物質を含む土壌や古い機関銃弾等が発見されました。
    (イ)平成25年6月、返還跡地に整備された沖縄市のサッカー場で有害物質を含むドラム缶等の廃棄物が発見されました。
    (ウ)平成27年11月、北谷町にある返還跡地の宅地の土壌から、基準値を超えるダイオキシン類が検出されました。 跡地利用推進法に基づく支障除去措置として、平成24年3月、沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(跡地利用推進法)が改正されました。 国は、所有者等に土地を引き渡す前に区域の全部について土壌汚染や不発弾の除去等の支障除去措置を講ずることとなりました。
  2. 牧港補給地区の環境汚染の報道について(再掲)、全部返還が合意されている牧港補給地区については、その周辺に生息するハブから高濃度のPCBなどが検出されたとの報道がなされ、また、平成27年9月、昭和47年から昭和61年までにかけて発生した油や有害物質の流出事故等の環境汚染に関する米軍文書が公開されています。関連があるか事実関係は明らかでないため、積極的な情報公開が必要です。
  3. 環境補足協定(平成27年9月)について(再掲)、日本の当局が施設及び区域の返還に関連する現地調査(文化財調査を含む。)を行う場合(原則150労働日前を超えない範囲)に適切な立入りを行えるよう手続を作成・維持することとされました。県が要望していた、少なくとも返還の3年以上前からの立入調査の実現が盛り込まれませんでした。また、日米安全保障協議委員会で返還が合意されている普天間飛行場において、これまで行われていた文化財調査は、環境補足協定に基づく手続によることとなったとして、中断しています。

沖縄県の考え方

  1. 返還予定地における支障除去措置について、沖縄県の場合、米軍提供施設面積の約65.4パーセントが民公有地であるため、施設及び区域の返還後に土地所有者が安心して土地を使用できるよう、また、跡地利用を円滑に実施できるよう措置される必要があります。また、施設及び区域の返還に伴う環境調査及び環境浄化手続等を明確に規定し、徹底した支障除去措置を講ずる必要があります。
  2. 土地の使用履歴について、日本国政府が行う施設及び区域における支障除去措置には、当該施設及び区域を使用していた米国の協力が必要不可欠です。汚染原因者としての責任の観点からも、米国政府は、施設及び区域の提供者である日本国政府と共同で対処する必要があります。
  3. 環境補足協定について(再掲)、これまで基地を抱える地元地方公共団体が求めてきたことが実現されることが重要であり、実効性のある運用がなされる必要があります。

沖縄県の要請

  1. 合衆国軍隊が使用している施設及び区域の返還に当たっては、事前に、日米両政府は、合衆国軍隊の活動に起因して発生した環境汚染、環境破壊及び不発弾等の処理について、共同で調査し、環境汚染等が確認されたときは、環境浄化等の原状回復計画の策定及びその実施等の必要な措置を執ること。そのための費用負担については、日米両政府間で協議する旨を明記すること。
  2. 返還が予定されている施設及び区域における土地について、使用開始後の形質の変更、建物の建設、廃棄物の処理等使用履歴に関する全ての情報を関係地方公共団体に提供する旨を明記すること。
  3. 日米両政府間で締結された環境補足協定については、同協定が実効性のあるものとなるよう努めるとともに、次の内容に配慮すること。(再掲)
    ア 事故や環境汚染が確認された場合には、関係する地方公共団体の速やかな現場立入りや試料採取を含む合同調査が可能となるよう環境補足協定の運用に努めること。また、日本国政府または合衆国政府が行う環境調査や汚染除去の過程を、事前に関係する地方公共団体に説明すること。さらに、関係する地方公共団体が必要と認める場合は、汚染除去後、確認調査及び一定期間のモニタリング調査を可能とすること。
    イ 返還前の土地の立入りについては、返還後の跡地利用が円滑に推進されるよう、日米安全保障協議委員会または日米合同委員会の返還合意後、極力早期に、少なくとも返還の3年以上前からの立入調査を可能とすること。また、これまで行われていた文化財調査が、環境補足協定に基づく手続によることとなったことにより中断していることから、関係地方公共団体による文化財調査等が円滑に実施できるよう、環境補足協定による立入りの手続きを明確に定めること。
    ウ 文化財の発掘調査に伴い、環境汚染や遺棄物等が発見された場合、上記アに基づき調査等を実施すること。また、発掘調査の安全性を確認するための調査を実施すること。

5.第5条関係(船舶及び航空機の出入及び移動)

現状と課題

  1. 米軍の航空機及び艦船による民間の空港及び港湾の使用について、日米地位協定第5条では、米軍の艦船及び航空機(米軍に徴用された民間船舶及び民間航空機を含む)が、我が国の空港、又は港湾に出入りする権利が認められています。しかしながら、関係法令が適用されなければ、他の航空機や艦船の安全を確保することは困難です。
    ア 米軍の航空機による民間空港の使用
    (ア) 平成18年まで、米軍のヘリコプターがフィリピンでの演習等のため、下地島空港を使用した(計62日、323回)。
    (イ) 平成24年3月、米軍機が米軍艦船への人員輸送のため、石垣空港を使用した。
    イ 米軍の艦船による民間港湾の使用
    (ア) 平成19年6月、米軍の掃海艇2隻が親善・友好訪問等のため与那国町の祖納港に入港した(復帰後初の民間港湾の使用)。
    (イ) 平成28年1月、2月及び10月、米陸軍揚陸艇が物資輸送等のため伊江港を使用した。
  2. 演習及び訓練の実態を伴う移動について、平成17年8月、海兵隊が沖縄自動車道で習熟運転を行ったことで、交通事故が発生しました。平成28年7月、約10人の海兵隊員が銃を携行したまま北部訓練場沿いの公道を移動しました。

沖縄県の考え方

  1. 航空機及び船舶の円滑、かつ、安全な運航を確保するため、米軍による民間空港及び港湾の使用は、緊急時以外は禁止する必要があります。また、施設の円滑かつ安全な管理のため、航空法等の法令のみならず港湾管理条例等を含めた国内法を適用すべきと考えます。
  2. 演習又は訓練については、提供されている施設及び区域内において行われるべきです。

沖縄県の要請

  1. 民間航空機及び民間船舶の円滑な定期運航及び安全性を確保するため、合衆国軍隊による民間の空港及び港湾の使用は、緊急時以外は禁止すること。また、合衆国軍隊が空港及び港湾を使用する場合は、国内法を適用する旨を明記すること。
  2. 第5条に規定する「出入」及び「移動」には、演習及び訓練の実体を伴うものを含まない旨を明記すること。

6.第9条関係(米軍人、軍属及びその家族の出入国)

現状と課題

  1. 平成8年12月、人、動物及び植物の検疫に関する日米合同委員会合意がなされ、検疫手続が適用されています。しかしながら、現状、人、動物及び植物に対する検疫などに関する日米地位協定上の規定がありません。
  2. 平成12年10月、山口県岩国基地内から、日本で生息していない毒グモのクロゴケグモ約60匹が見つかりました。平成18年7月には岩国基地周辺で発見されています。

沖縄県の考え方

海外からの伝染病の侵入に対する基地周辺地域の住民の不安を払拭するためには、人、動物及び植物に対する検疫並びに人の保健衛生に関する国内法を適用し、米軍に対しても日本国当局による検疫を実施する必要があります。

沖縄県の要請

人、動物及び植物に対する検疫並びに人の保健衛生に関して、国内法を適用する旨を明記すること。

7.第13条関係(課税)

現状と課題

  1. 昭和29年3月、日米合同委員会において、米軍人等の私有車両による道路の使用について金額を課し、地方公共団体が車両の所有者である米軍人等から当該金額を受領する旨が合意されました(自動車税等として徴収)。
  2. 平成11年2月、日米合同委員会において、上記金額が改正されました。
  3. 米軍人等の所有する私有車両に対する自動車税等の額は、民間車両と比較して低いものとなっています。
  4. 民間車両と同じ税率の自動車税を課した場合、年間で約6億9千万円の税収の増加が見込まれます。

沖縄県の考え方

米軍人等の私有車両の通行に伴う行政需要の増加及びそのために要する県の財政上の負担は、小さいものではありません。

沖縄県の要請

合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私有車両に対する自動車税及び軽自動車税について、民間車両と同じ税率で課税する旨を明記すること。

8.第15条関係(歳出外資金諸機関)

現状と課題

  1. ゴルフ場でのプレーやセスナ機への搭乗等、諸機関が提供する役務や施設の利用については、日本人が利用する際の制限の内容及び利用手続等に関する明確な規定がありません。
  2. 沖縄県ゴルフ事業連絡協議会から、米軍ゴルフ場について、日本人の利用が多いとして、日本人が利用することを禁止し、民間企業に支障がない、米軍のための福利厚生施設とするよう要望があります。
  3. 平成11年12月、嘉手納エアロクラブ所属のセスナ機が嘉手納弾薬庫地区に緊急着陸する事故が発生。日本人を搭乗させた遊覧飛行が日常的に行われていることが問題となりました。

沖縄県の考え方

諸機関は、日本の租税が免除されており、日本人が諸機関の役務や施設を利用する際の具体的な制限の内容及び利用手続等についても、課税の公平性の観点から、物品の販売、処分に準じた明確な規定を設ける必要があります。

沖縄県の要請

第15条第3項を改正し、施設及び区域内の諸機関が提供する役務についても、物品の販売の場合と同様に、日本人に対する役務の提供を制限する旨を明記すること。

9.第17条関係(刑事裁判権)

現状と課題

  1. 日本国の当局が裁判権を行使すべき被疑者の拘禁について、身柄が合衆国の手中にある場合、 取り調べへの影響の懸念があります。平成21年、読谷村で発生したひき逃げ死亡事件では、基地内に身柄があった被疑者が取り調べに応じませんでした。また、被疑者が本国に逃亡する可能性があります。平成5年、婦女暴行の容疑で基地内に拘束されていた陸軍兵が、偽造した軍の命令書などを利用して民間機で本国へ逃亡しました。運用改善(起訴前の拘禁移転(平成7年10月))について、 殺人又は強姦という凶悪な犯罪に係る起訴前の拘禁の移転についての要請に対し、好意的な考慮を払うとする運用改善が日米合同委員会で合意されました。しかしながら、要請から被疑者の身柄が移転されるまで、平成13年6月に発生した婦女暴行事件では4日、平成15年5月に発生した強姦致傷事件では2日を要しました。平成14年11月に発生した婦女暴行未遂事件では、日本側の起訴前の身柄引渡し要請に対し、明確な理由が示されないまま拒否されました。起訴前の身柄引渡しの判断は、依然として合衆国の裁量に委ねられています。
  2. 施設及び区域外における米軍財産の捜査について、平成20年10月に名護市で発生した、施設及び区域外へのセスナ機墜落事故では、警察が刑事特別法第13条の規定により機体の差押えについて米軍に同意を求めましたが、拒否されました。機体は、日米地位協定合意議事録を踏まえ、米側により回収されました。
  3. 施設及び区域外における航空機事故の際の現場統制について、平成16年8月、CH-53ヘリコプターが沖縄国際大学構内に墜落した事故では、発生直後の現場周辺において米海兵隊員が現場統制を行ったことから、県民が強く反発しました。このことを受け、平成17年4月、「日本国内における合衆国軍隊の使用する施設・区域外での合衆国軍用航空機事故に関するガイドライン」が日米合同委員会で承認されました。

沖縄県の考え方

  1. 事件・事故が繰り返されるのは、米軍人・軍属等が日米地位協定によって守られているとの認識が根底にあると言わざるを得ません。合衆国の軍当局に最終決定権を留保した合意内容では不十分であり、全ての犯罪の場合について、日本国の当局が裁判権を行使すべき被疑者の起訴前の拘禁は、速やかに日本側が行えるようにする必要があります。
  2. 米軍の財産が施設及び区域の外にある場合には、原則として米国の管理権が及ばないことから、日本国の当局が捜索等を行うとする必要があります。
  3. 施設及び区域の外における現場統制は、本来日本国の当局の主導の下で行われるべきです。

沖縄県の要請

  1. 合衆国の軍当局は、日本国の当局から被疑者の起訴前の拘禁の移転の要請がある場合は、速やかにこれに応ずる旨を明記すること。
  2. 米軍の財産が施設及び区域の外にある場合には、日本国の当局が捜索、差押え又は検証を行う権利を行使する旨を明記すること。
  3. 施設及び区域の外における事故現場等の必要な統制は、日本国の当局主導の下に行われる旨を明記すること。合衆国の軍当局は、日本国の当局から被疑者の起訴前の拘禁の移転の要請がある場合は、これに応ずる旨を明記すること。

10.第18条関係(民事請求権)

現状と課題

  1. 平成8年12月合意の運用改善について、公務外の事件・事故の際の被害者への補償については、平成8年12月のSACO最終報告によって慰謝料や見舞金の支払い手続、前払いの請求、無利子融資制度等に関する運用改善がなされています。しかしながら、法的義務として認めたもの又は法的制度として確立されたものではありません。
  2. 米軍人等に支払われる給料等の差押えについて、米軍人等の子どもを出産した女性が、養育費を米軍人等に支払ってもらえないため、生活に困窮する事例がしばしば見受けられます。合衆国政府は、日本の法律に基づき強制執行を行うべき私有財産があるときは、これを差し押さえることができる旨規定されていますが、米軍人等に支払う給料等の債権に対する差押え等に関する規定がありません。

沖縄県の考え方

  1. 被害を受けた者の迅速、かつ、十分な補償を図るためには、国内法の整備を含め、日米両政府の法的責任で被害者の損害を迅速に補填する制度を設け、被害者の補償を受ける権利を法律上明確に規定する必要があります。
  2. 米軍人等に支払われる給料等に対して、ボン補足協定と同様に、我が国の裁判所の差押え、支払い禁止等の強制執行を可能にする旨を明記する必要があります。

沖縄県の要請

  1. 公務外の合衆国軍隊の構成員若しくは軍属、若しくはそれらの家族の行為又は不作為によって損害が生じた場合において、被害者に支払われる損害賠償額等が裁判所の確定判決に満たないときは、日米両政府の責任で、その差額を補填するものとし、補填に要した費用負担については、両政府間で協議する旨を明記すること。
  2. 合衆国の当局は、日本国の裁判所の命令がある場合、合衆国軍隊の構成員又は軍属に支払うべき給料等を差し押さえて、日本国の当局に引き渡さなければならない旨を明記すること。

11.第25条関係(合同委員会)

現状と課題

  1. 日米合同委員会の合意事項の公表について、昭和47年5月15日の日米合同委員会で、沖縄県における米軍基地使用について合意されましたが、その文書(5・15メモ)は、県の再三の要請にもかかわらず、平成9年3月まで公表されませんでした。また、平成8年12月のSACO最終報告において、「日米合同委員会合意を一層公表することを追求する」との運用改善が行われましたが、その後の日米合同委員会合意に関する公表の実施状況については、必ずしも十分とは言えません。
  2. 地元地方公共団体の意向聴取等について、日米合同委員会は日米両国政府の代表者で構成されており、施設及び区域の提供、運用、返還等に関して最も大きな影響を受ける周辺地域の住民や地元地方公共団体の意向が反映できるような仕組みが設けられていません。

沖縄県の考え方

  1. 米軍基地の多くが住宅地域に近接している沖縄県においては、日米地位協定や日米合同委員会に基づく米軍基地の運用等は、周辺地域に居住する住民及び地元地方公共団体に大きな影響を与えるものであることから、重大な関心事です。そのため、日米合同委員会の合意事項を迅速に公表することが、合衆国軍隊と地域住民及び地方公共団体との信頼関係を構築する礎になります。
  2. 米軍基地の運用等に関し、日米合同委員会において地元地方公共団体の意見を聴取する場を設け、それを合意内容に反映させるような仕組みが必要です。

沖縄県の要請

  1. 日米合同委員会の合意事項を速やかに公表する旨を明記すること。
  2. 日米合同委員会において、施設及び区域周辺の住民に影響を及ぼす事項を協議する場合は、関係地方公共団体の意見を聴取し、その意向を尊重すること。また、日米合同委員会の中に施設及び区域を有する地方公共団体の代表者の参加する地域特別委員会を設置する旨を明記すること。

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