第3章分野別推進の方向
沖縄県では、第2章で示した方針、視点で、下記の5分野におけるユニバーサルデザインの取り組みを推進していきます。この章では、「ユニバーサルデザイン」を「UD」と記述しています。
1.まちづくり
(1)公共建築物・施設
現状と課題
- 現在の公共建築物は、「ハートビル法」や「沖縄県福祉のまちづくり条例」等を基に「バリアフリー」の観点から整備に取り組んでおり、また、企画・設計等、関係者にUDの考え方が十分浸透していないため、バリアフリー化の基準達成が目的化してしまいがちである。
- 利用者のニーズを把握し、そのニーズに応える意識(システムづくり)が不十分である。
- 民間の施設等において、比較的新しいものはバリアフリー化されるなど「誰にでも利用しやすい」よう配慮されている。しかしまだバリアフリー化が必要なものも多い。(バリアフリー化されていても、商品が通路に陳列され通りにくい等の店舗が見受けられる)
- 公立、公営の建築物や施設の整備については、予算等の制限があり、利用者のニーズすべてに応えることは困難である。
推進の方向
- 基準の達成だけでなく、利用者のニーズにも応えられるように取り組む。
- 設置者(設置主体に関係なく)も利用者も皆、UDを理解し、よりよいまちづくりを推進していくため、共通の整備指針を作成する。UDの考え方を整理し、どのような建築物、施設でも区別なく導入できる手法を検討する。
- 店舗など民間の建築物、施設において、新設の場合は設計・計画の段階でUDの導入を検討してもらう。また、既設のものは改築時のバリアフリー化を検討してもらう。
- 予算の範囲内で利用者のニーズにできるだけ応えられるよう(ニーズ)を調整する。
(2)交通機関(道路含む)
現状と課題
- 運行体系のあり方や、交通機関相互の連携(乗り継ぎ)における利便性において、利用者の二ーズの把握が不十分であり、既存の施設等を活用した公共交通体系の再構築が求められている。
- 施設や車両等のバリアフリー化も進んできているが、健常者の利用のみを想定して設計されたものも存在する。
- 道路については、国、県、市町村等、管理主体が複数にわたるので、取り組みが統一されず、UDの導入方法(結果)に違いが生じる可能性がある。
- 道路標識において、英語(ローマ字)、日本語併記に異なる表現がある。また、視認性が低く理解しにくい絵文字(ピクトグラム)等がある。
- 歩道幅員が狭い、また歩道と車道間に大きな段差・勾配があり、歩きにくい、車イスが通れない等の道路が存在する。
- 交通情報の提供が不十分であり、来県者(旅行者・外国人等)への情報提供について不満がある。
推進の方向
- 既存の施設、車両などのバリアフリー化を進め、新規についてはUDの導入を検討する。
- 交通バリアフリー法等の基準の達成も重要であるが、それだけではなく、利用者のニーズに応えることを目的として施策に取り組む。
- 道路へのUD導入については、国、県、市町村など各管理主体が連携し、利用しやすさ等に差のない道路を目指す。
- 視認性の高い、分かりやすく、親しみのもてる道路案内標識の設定等の情報提供を充実させる。
- 車両だけでなく、安全で快適な歩行空間の整備に努める。
- 来県者(旅行者・外国人等)への情報提供を充実させる。
(3)住宅
現状と課題
- 住宅建設などにあたり、それに関わる設計者や施工者に、UDの考え方が普及していない、あるいは、それが取り入れられにくいため、(階段、エレベーター等)住戸までの移動経路を含め、UDの導入(バリアフリー化)が不十分である。
- 資金面、情報面の制約から、建築時点で必要のない建設等への投資が行われにくい。
推進の方向
- 「(はじめから)誰にでも住みやすい、暮らしやすい住宅づくり」を進めるため、設計・施行の関係者や入居者(消費者)へUDに関する情報提供等を行う。
- 必要な時点での改造のしやすい、SI住宅(骨格と内装・設備を分離し、内装や設備などが改修しやすいつくりの住宅)の導入を検討する。
2.ものづくり
製品づくり(支援)、消費
現状と課題
- 県民(消費者)へのUDの考え方が十分浸透していないため需要がなく、製造業者がUD製品の開発・製造に取り組みにくい。
- 製造業者にも、UDの考え方が十分に浸透していないため、開発・製造に取り組んでいない。
推進の方向
- 県民(消費者)へのUDの考え方を浸透させ、UD製品の情報提供、使用の奨励により需要を喚起させる。
- 製造開発団体等と連携し、UD製品の生産・供給の取り組み支援を検討する。
3.情報・サービスづくり
(1)情報
現状と課題
- 情報入手(提供)の手段が限られている。視覚(文字やその他の表示)、聴覚(放送や音)、感覚(点字)等、複数の知覚で入手できるようになっていない。
- 情報の入手が困難である。
見づらい/文字が小さい等、視覚的にわかりにくい。
聞き取りにくい/早口や言語が不明瞭である等、聴覚的にわかりにくい。
日本語のみの表現/複数の言語で表現されていない。
情報入手方法/どこで必要な情報が入手できるかが不明瞭。情報が整理されておらず、必要な情報が取捨しにくい。 - 情報の内容がわかりにくい。わかりにくい文章(一般的でない表現)や絵図等が使われており、内容の把握が難しい。
- インターネットの閲覧、IT機器の操作等、新しい分野に関しては、上記以外に県民間のデジタルデバイド(情報格差)の問題がある。
推進の方向
- 一方通行の情報提供にならないよう、受信者の身になって、「誰にでもわかりやすく、入手しやすい情報」の発信方法を検討する。
- インターネットのウェブサイトを誰にでも閲覧しやすい構造、デザインにする。またデジタルデバイド(情報格差)の是正に取り組む。
(2)サービス
現状と課題
- 行政サービスは、民間に比べて利用の手続きが煩雑でわかりにくく、部署によって対応にバラつきがある等、改善を求める声が多い。
推進の方向
- 一人ひとりの「思いやり」や「気持ち」等、格差のあるものだけに頼らず、サービスの提供に関する一定の基準(目安)を設け、マニュアル化する等、誰にでも利用しやすい、平等なサービスの提供が可能となるよう取り組む。
4.観光地づくり
観光地(施設)、宿泊施設、お土産品店等
現状と課題
- バリアフリー観光を推進しているが、対象者が高齢者や障害者のみとなっており、対象を広げる余地がある。
- 観光地(お土産品店)、宿泊施設等について、バリアフリー化等、施設設備が十分とはいえず、また、(注1)アクセスの改善が必要な事例が多く見られる。
- (民間)の観光情報が多く出回っているが、「情報」の項目に沿った情報の提供が行政に求められている。
- 今後、外国人観光客の誘致を促進していくが、外国人を対象とした情報発信が不十分である。
- すべての観光客を、等しく迎え入れるホスピタリティが不十分である。
推進の方向
- バリアフリー観光を発展させて、様々な(物理的な)制限をなくし、誰にでも参加できる「UD観光」のメニューづくりに取り組む。
- アクセスしやすく、誰にでも観光しやすい(訪れやすい)よう観光地の施設整備等を推進する。
- アクセスしにくい等、ハード面での問題解決が困難なものは、介助サービスの提供等ソフト面での対応を検討する。
- 観光・物産情報提供を強化する。
- すべての観光客を等しく迎え入れる体制づくりのために、(注2)ホスピタリティの醸成に取り組む。
注1/アクセス:目的地に到達すること
注2/ホスピタリティ:おもてなしの心
5.状況づくり
(一般県民への)普及活動
現状と課題
- すべての分野において、UDの考え方が十分に浸透していない。「誰にでも利用しやすいように」といっても、物理的、技術的な制約があり、利用者のニーズ(制約の程度等)に対して利用区分を設けてそれぞれ個別に対応している。(例えば点字ブロックや手話)
推進の方向
- 利用者にUDの考え方の普及啓発を図るとともに、「(現段階で)『誰でも利用できる、利用しやすいもの』がつくれないものについては、利用者のニーズにあわせて個別に対応せざるを得ない」という現状を説明し、各利用者がそれぞれ(区分ごとに)利用しやすい状況を保てるような状況づくりに取り組む。
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