醸造分野の研究紹介(食品・醸造班)
1.泡盛関連研究
古酒品質の明確化
多様化するマーケットの中では、消費者の嗜好や価値観、飲酒シーン等に対応した泡盛のポジショニングを明確にすることが必要となっています。古酒に関しては、高級ウイスキー等と同等なブランド力を構築することが重要です。
マーケットで泡盛の価値を最大化するため、科学的な観点から古酒品質の明確化に取り組んでおり、科学的エビデンスを構築することで、プレミアム商品としての古酒の認知度向上や高価格販売を目指しています。
研究内容
古酒の古酒たる所以を明確化するため、成分と品質の関係を明らかにする研究を行っています。
- ステンレスタンク貯蔵泡盛での古酒香のメカニズム解明。
- 味覚センサーを用いた、古酒と一般酒の比較。
これまでの研究成果
- ステンレスタンク貯蔵泡盛では、泡盛古酒香のひとつであるバニリンは前駆体の変化や貯蔵容器からの成分移行ではなく、オフフレーバーが減少した結果、元から含まれていたバニリンの香りが顕在化したと推察されました。
- 古酒と一般酒の味の違いを、初めてチャートで可視化しました。
泡盛のポジショニングマップ
泡盛出荷量は平成16年をピークに減少し続けています。その最大の要因として、酒の種類が多様化し消費者が好みの酒を自由に選べるようになったことが挙げられます。
多様化するマーケットの中では、消費者の嗜好や価値観、飲酒シーン等に対応した泡盛のポジショニングを明確にすることが必要であることから、他の酒類と比較した泡盛のポジションの明確化を目指しています。
研究内容
アンケートや成分分析の結果から、現在の市場における泡盛のポジション解明に取り組んでいます。
- 消費者アンケートに基づくマッピングでの現状把握
- 成分や官能検査に基づくマッピングでの、泡盛と他の蒸留酒のポジショニング確認
これまでの研究成果
アンケートや成分分析などの結果から、以下のことが明らかとなってきました。
- 泡盛は若い人や女性に飲まれていない。
- 他の酒類との違いがネガティブに捉えられている。
- 泡盛の香りは、他の蒸留酒と比較して単調で濃厚。
- 貯蔵容器に樽を用いることで、樽貯蔵酒の風味(こんがりとした、木材様の、カラメル・甘い香り)のポジションにシフトする。
泡盛黒麹菌類のゲノム解析
泡盛は焼酎の一つですが、他の焼酎との違いとして、黒麹菌を用いた米麹のみを使うという特徴があります。
そこで、当センターでは、委託による黒麹菌類に関する調査研究を実施しました。
具体的には、国内に存在する中国・東南アジア由来の黒麹菌や、国外の微生物保存機関で保存されている黒麹菌に関する情報収集を行うとともに、入手できるものについては、次世代シーケンサーによりそれらのゲノム情報の解析を行い、泡盛黒麹菌類との比較を行いました。
詳しくは下記リンクをご覧ください。
事業名
「泡盛黒麹菌の独自性に関する調査研究」委託業務(平成28年、平成29年)
泡盛酒質多様化のためのライブラリの構築
当センター試作の泡盛や焼酎について、実際に試飲を行い、香りや味の確認ができるよう、当センター内に泡盛ライブラリを整備しました。(対象:県内泡盛製造業者のみ)
(例)
- 泡盛101号酵母以外に、ワイン酵母やウィスキー酵母、清酒酵母で製造した泡盛
- 精米50%タイ米、清酒用米、もち米や県産長粒米で製造した泡盛
- 麦、とうもろこし、コーリャンなどを用いた焼酎
- 芋酒(イムゲー )
詳しくは下記リンクをご覧ください。
事業名
琉球泡盛再興プロジェクト支援事業(平成31年-令和2年)
2.その他酒類関連研究
沖縄県産素材を活かしたクラフトジン
瑞穂酒造株式会社は、自社開発酵母による泡盛の製造や、紅茶等の県産素材を用いたリキュールの開発を行っており、これらの技術を利用したクラフトジンの開発を目的として工業技術センター、東京農業大学との共同研究を行いました。
当センターはジンの香気成分分析、官能評価や統計解析(主成分分析、コレスポンデンス分析)によるマッピングを担当し、市販品と開発クラフトジンの特徴を視覚的に確認しました。
関連する資料
- 研究報告:ジンに含まれる香気成分について、第20号(平成29年度)、p55-58 (PDF 749.8KB)
- 支援事例集:県産クラフトジンの開発、No.106(平成30年度) (PDF 137.4KB)
- 技術情報誌:県産素材を活用したクラフトジンの開発、通巻72号、Vol.21No.1、p2(2018年8月) (PDF 1.1MB)
- その他:県産素材を生かしたクラフトジンの開発、工連ニュース(2018年10月号、p22)
琉球庶民の酒「芋酒」の復活
芋酒(いもさけ、沖縄読み:んむざき)は、沖縄地方で琉球王朝時代から大正期にかけて自家醸造された蒸留酒です。1908年に酒造税が沖縄県へ適用されると、芋酒は製造されなくなりました。
当センターではこのユニークな「芋酒」の復活を目指し、当時の製法を参考に現代の製造技術で試作を行いました。
関連する資料
- その他:王朝時代の庶民の酒芋酒(ンムザキ)の復活、工連ニュース(2019年6月号、p15)
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このページに関するお問い合わせ
沖縄県 商工労働部 工業技術センター
〒904-2234 沖縄県うるま市州崎12-2
電話:098-929-0111 ファクス:098-929-0115
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