石垣島全域を対象とした赤土等流出防止農地対策
1.轟川流域赤土等流出防止農地対策の効果
農地からの赤土等の流出防止対策は、海域環境の保全のみならず、豊沃な耕土の流出防止のうえからも緊要な課題となっており、県ではその対策を土木的対策と営農的対策の両面から行ってきています。
石垣島におけるこれまでの土木的対策としては、平成18年度までに7地区627haが完了しており、本年度も7地区1,060haで継続して整備中です。
しかし、その対策効果については、影響範囲が広域であることから実測が困難であり、且つその要因が複数に亘ること、効果発現にタイムログを生じることなどから、対策工法毎あるいは定点観測的な評価しかなく、総合的な数値削減量を提示することが困難でした。
そのため、広域的な数値評価を行うために、平成16年度に策定した「轟川流域赤土等流出防止農地対策マスタ-プラン」では、土壌流出を推定する式として一般的に用いられる土壌流亡予測式(USLE式)を活用し、轟川流域における平成15年時点の流出推算値11.0t/ha/年を、昭和48年当時の流出量(推算値3.1t/ha/年)に低減(中間目標として平成23年までに50%削減(5.3t/ha/年))する計画を策定しました。
今回、一回目の中間検証として、平成18年流出量を推算した結果、8.7t/ha/年であることが算出され、3年で20%の低減があったことが確認されました。
県では、轟川流域での流出防止対策の整備状況や中間検証の結果を踏まえ、同マスタ-プランを石垣島全体に拡大し、西南部海域や北部海域への赤土流出防止対策の促進を図ることとしました。
2.石垣島赤土等流出防止農地対策プランの概要
平成17年度から3ヶ年にわたって検討してきた「石垣島赤土等流出防止農地対策プラン」では、市街化地域を除く石垣島全域を流域別に9地区87流域に分割し、且つ農用地について一筆(約17,000筆)ごとに調査・解析を行い、流出防止対策の概要と流出削減量の目標値を設定しました。
調査項目は、土壌流亡量を算出するUSLE式の構成項目である「土壌」「勾配」「畝勾配」「斜面長」「ほ場植生状況」「植生帯分布」「沈砂地・浸透池分布」等多岐にわたっており、これをデ-タペ-ス化しました。
これを基に平成18年の現況流出量を推算したところ、宮良地区で7.0t/ha/年、名蔵地区で5.2t/ha/年であり、石垣島全体では4.7t/ha/年と推計されました。
また、赤土流出の危険性のある地域全体に対策を行うことにより、現況から約60%削減することができると試算されました。
営農的対策については、営農部局で別途定めている「赤土等流出総合対策プログラム開発調査」とリンクした3,166haの農地を対象にした土地利用計画と営農計画を用い、流出削減量を算出しています。
特に、緑化被覆対策とは別に、梅雨期における裸地の出現を少なくするために、サトウキビの作付体系を夏植から春植に移行する必要性があることが、「さとうきび増産プロジェクト」でも謳われています。
土木的対策は草地等も対象流域となるため、営農対策対象よりも大きい4,527haが対象となります。
具体的な対策として、発生源対策(勾配修正・畦畔設置)・流出防止対策(排水路整備・沈砂池等設置)・外的要因発生箇所対策(補修・改良)を箇所別に提案し、そのエリアからの流出削減量を算出しています。
なお、このうち発生源対策は3%以上の勾配を持つ区画しか対象となりません。
これを基にフルプランを作成したうえで、当面の削減目標として5年後の平成24年を設定し、ほ場整備が一度完了した地区を優先的に、年間事業費の確保の可能性と地域が一体となって継続して対策が行われ得る2,168haを、土木的対策の対象としました。
その結果、基準年から21%の削減となる3.7t/ha/年を目標流出量としました。
3.今後の課題
今後は、流域毎に個々の営農状況変化・施設整備の進捗に応じて流出量が推定できることから、流域毎の流出削減率の中間検証を定期的に行い、対策効果を明らかにしてまいります。
また、赤土等流出防止対策(土木的対策)後の課題は、造成された施設の機能維持を図るための管理が不徹底であつたことにあります。これまでは、受益者及びその団体自らが土砂排除を行うほか、行政側としても土地改良施設維持管理適正化事業や土砂流出防止対策事業により堆積した土砂の排除等を行ってきましたが、事業量に対して事業費が極めて少なく、場当たり的な対応にならざるを得ない状況でした。
そのため、今回は維持すべき施設の場所・数を特定するとともに、管理主体・管理方法・作業頻度等を定めた長期的な維持管理計画を策定し、継続的に必要となる経費を算出しました。その結果、島内にある314基の沈砂池の土砂除去にかかる経費は、最低でも年間670万円程度必要であると算出しました(轟川流域は調査中のため、除く)。
赤土等流出防止対策を始めとした環境保全活動は、これまでの「自助」「公助」から、地域が主体的となった「共助」による取り組みが期待されています。県としても、農村地域の「農地・水・環境」といった地域資源の保全に取り組む「資源保全の会」の活動を支援する取り組みを始めているほか、維持管理経費の捻出方法についても今後検討していきたいと考えておりますので、地域の理解と協力をお願いします。
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