地域ブランド/地域団体商標
2006年に「地域団体商標制度」が始まり、これまで全国的な知名度がないと登録できなかった「地域名+商品名」の商標が、近隣都道府県で一定の周知性等の要件を満たしていれば登録できるようになりました。
制度の目的
地域ブランドをより適切に保護することにより、事業者の信頼の維持を図り、産業競争力の強化と地域経済の活性化を支援することを目的としています。
主な登録要件
1.出願人が特別の法律により設立された組合であること。また、組合の設立根拠法に構成員の資格を有する者の加入の自由が担保されていること。
- ※具体的には事業協同組合、農業協同組合、漁業共同組合、酒造組合、森林組合等が対象となります。
- ※個人、地方自治体、社団法人、財団法人、株式会社、NPO法人及び商工会等は認められません。
2.商標が地域の名称と商品(役務)の普通名称等の文字からなること。
地域団体商標として登録できる商標は以下の3類型です。
類型1「地域の名称」+「商品(役務)の普通名称」
(例:○○りんご、○○味噌)
類型2「地域の名称」+「商品(役務)の慣用名称」
(例:○○焼、○○温泉)
類型3「類型1」又は「類型2」+「産地等を表示する際に付される文字」
(例:○○産みかん、本場○○織)
- ※地域団体商標は、文字のみで表した商標であることが必要で、図形入りの商標は認められません。
- ※「地域の名称」には市町村単位の地名ばかりでなく、旧地名、山岳名、海域名等の地理的名称が含まれます。(例:琉球、やんばる、八重山、慶佐次川等)
3.商標中の地域の名称が商品(役務)と密接な関連性を有すること
密接な関連性とは、商品の産地、役務の提供地、主要原材料の産地等であることを指します。
4.出願人が商標を使用したことで一定程度の周知性を獲得していること。
出願商標が「○○みかん」であった場合に、○○地域で生産される「みかん」が有名であるからといって「○○みかん」がすぐに登録できるとは限りません。
出願組合又はその構成員が、○○地域で生産された「みかん」に「○○みかん」という商標を使用した結果、需要者の間に広く知れ渡っていることが必要となります。
そのため、出願にあたっては商標の使用を証明する書類(出荷・販売状況、広告宣伝・記事掲載等)を提出する必要があります。
なお、出願人である組合以外の者が既に出願商標を使用し、出願人と共同して周知にしたと認められる場合は、出願人は商標登録を受けることは出来ません。ただし、使用者が組合の場合は共同して出願すれば登録の可能性はあります。
出願人の取り組みによって周知性が高まった事実を証明する書類としては、以下のものが必要となります。
- 実際にしようしている商標並びに商品又は役務
- 使用開始時期、使用期間、使用地域
- 生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域、売上高等)
- 広告宣伝の方法、回数及び内容
- 一般紙、業界紙、雑誌又はインターネット等における記事掲載の回数及び内容
- 需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果
周知性の証明資料の具体例
- 広告宣伝が掲載された印刷物(新聞、雑誌、カタログ、ちらし等)
- 仕切伝票、納入伝票、注文伝票、請求書、領収書又は商業帳簿
- 商標が使用されていることを明示する写真
- 広告業者、放送業者、出版業者又は印刷業者の証明書
- 同業者、取引先、需要者等の証明書
- 公的機関等(国、地方公共団体、在日外国大使館、商工会議所等)の証明書
- 一般紙、業界紙、雑誌又はインターネットの記事
- 需要者等を対象とした商標の認識度調査(アンケート)の結果報告書
※ただし、需要者の認識度調査(アンケート)は、実施者、実施方法、対象者等その客観性について十分に考慮されます。
地域団体商標登録の効果
直接効果
- 指定商品(役務)について、登録された商標を使用する権利を専有できます。
※ただし、地域団体商標の出願前から不正競争の目的なく継続して使用をしている者については、引き続き使用することができます。 - 類似商標の他人による使用等を排除できます。(差止請求権、損害賠償請求権等)
- 登録後の商標権の移転が制限されます。(合併等の一般承継は除く)
間接効果
- 国から専用を認められた商標として、公的機関に広く紹介してもらえたり、マスコミの記事にも取り上げられやすくなるなど、全国的な認知度が獲得しやすくなります。
- 事業者や地域住民にも地域ブランド商品を育てようとする意識がこれまで以上に高まり他の特産品のブランド化や異業種連携による関連商品の開発などが促進されます。
地域団体商標を目指すにあたって留意しておきたい点
1.通常の商標での出願も視野に入れる
前述のとおり、地域団体商標の主な出願要件は、出願人が法人格を有する事業協同組合、その他の特別の法律により設立された組合であることや、地域名と商品の間に密接な関連があること、隣接する複数都道府県で需要者の間に商品(サービス)が広く認識されていることなどが求められています。
また、地名入り商標を付した商品(サービス)の認知度が高くても、それが出願する組合による活動(販売・PR等)の成果でなければ登録されませんので、通常の商標を取得するよりもハードルは高いと言われています。
もし、組合の販売・広告活動等による需要者への周知性が十分でないと思われる場合は、先に「地域名+商品名」に図形やマークを組み合わせた通常の商標として登録をしておいて、法的に類似品から地域の商品を保護した上で、地域団体商標の登録を目指し、組合としての販売実績やPRを積み重ねて需要者の認知度を着実に高めていくことも一つの対応だと考えられます。
地域団体商標はあくまで地域ブランドづくりの一つの手段
地域団体商標制度を活用することは、模倣品対策や消費者への信頼度向上、広告宣伝効果など、様々な効果があり、地域ブランドを築き上げていく過程で有効な手段の一つと言えます。
しかし、地域団体商標を取得すること自体を地域ブランドづくりの最終目標としてはいけません。商品やサービスの価値を上げ続け、商品に対する消費者の信頼と評価を高めていきながら、関係者が一丸となって地道に地域ブランドを育て続けていくことが重要なのです。
その他
地域団体商標について更に詳しく知りたい場合は特許庁ホームページへ
制度の手引き・活用マニュアルなど、地域団体商標を出願する際に参考となる資料は「ガイドブックなどのダウンロード」ページへ
このページに関するお問い合わせ
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