令和7年第1回沖縄県議会(Iはじめに)
Ⅰ はじめに
ハイサイ、グスーヨ-、チューウガナビラ。
令和7年第1回沖縄県議会の開会に当たり、議員各位の御健勝を心からお喜び申し上げますとともに、日々の御精励に対し深く敬意を表します。
令和7年度当初予算案などの重要な議案の審議に先立ち、まず、県政運営に当たっての私の所信の一端を申し述べ、議員各位及び県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
第1に、県政運営に取り組む決意について申し上げます。
今年は、戦後80年の節目の年であります。この間、沖縄は、多くの困難な課題に直面する中で、県民各位や関係者の努力により、県民生活は着実に向上してまいりました。一方で、歴史的、地理的、自然的な特殊事情に起因する行政課題や自立的発展、豊かな住民生活の実現といった社会経済面での課題、沖縄を取り巻くアジア・太平洋地域の複雑化する社会情勢等の課題も明らかになっております。
戦後80年を機に、これまでの歴史を振り返り、先の大戦における犠牲者を追悼するとともに、長期的な視点に立って将来を見据えながら、未来へ向け、平和で豊かな沖縄を実現するため、そして、復帰50年の節目に策定した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」に込めた平和への願いを叶えられるよう、心を込めて全力で取り組んでいく所存です。その一環として、今年は、戦後80周年平和祈念事業を実施し、次世代を担う若者をはじめ、多くの県民の「平和を考える機会」の創出や平和を希求する「沖縄のこころ」の国内外への発信力強化など、未来へ向け、県民一人ひとり、さらには、沖縄を訪れる全ての人々を含めて、平和で豊かな沖縄を描いていけるよう、全庁体制で取り組んでまいります。
一方、世界では、ロシアによるウクライナ侵攻やガザ地区におけるイスラエルとハマスとの紛争の長期化など、憂慮すべき事態が続いております。アジア・太平洋地域の安全保障環境についても、中国の軍事力の強化、東シナ海・南シナ海における現状変更の試み、台湾や朝鮮半島を巡る問題などが存在する一方、東アジア地域における経済的な結びつきが密接な今日において、平和的な外交・対話を通じた緊張緩和と信頼醸成がこれまで以上に必要であると考えております。沖縄独自の歴史的・文化的特性等のソフトパワーと国際ネットワークを最大限に活用することで、対話や交流、国際協力などの平和的な手法で信頼関係の構築を図り、様々な主体と連携しながら地域外交を推進してまいります。
さらに、各主体が連携することで相乗効果を高め、総合力を発揮することにより、本県の国際関係施策を質・量ともに強化し、アジア・太平洋地域の平和構築や相互発展へより積極的な役割を果たしてまいります。
復帰から50 年以上経た現在もなお、国土面積の約0.6 パーセントに過ぎない本県には、在日米軍専用施設面積の約70.3 パーセントが集中し続けており、日常的に発生する航空機騒音をはじめ、米軍人等による事件・事故など、沖縄県民は過重な基地負担を強いられ続けています。また、これらの広大な米軍基地は、市街地を分断する形で存在し、県経済の発展をフリーズさせています。本県の基地負担の状況は異常であり、到底受忍できるものではないことから、県としては、引き続き、県民の目に見える形で基地負担の軽減がなされるよう、取り組んでまいります。
特に、普天間飛行場については、市街地の中心部に位置しており、航空機事故への不安や騒音被害など、返還合意から28年が経過した今もなお、住民に大きな負担を強いていることから、同飛行場の一日も早い危険性の除去は喫緊の課題であり、県民の強い願いであります。
一方、政府が唯一の解決策とする普天間飛行場の辺野古移設については、軟弱地盤の存在が判明し、提供手続の完了までに約12 年を要するとされ、更なる工期の延伸も懸念されることから、辺野古移設では、同飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらないと考えております。
県としては、引き続き、政府に対して対話により解決策を求める民主主義の姿勢を粘り強く訴え、辺野古移設が唯一の解決策との固定観念にとらわれることなく、普天間飛行場の速やかな運用停止を含む一日も早い危険性の除去、県外・国外移設及び早期閉鎖・返還を実現するよう求めてまいります。また、平成25 年に県議会議長及び全41 市町村の首長・議会議長等が「米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」を求めた建白書の精神、これまでの県知事選挙や県民投票で県民が一貫して示してきた辺野古新基地建設反対の思いを実現するため、全力で取り組んでまいります。
令和4年12 月、安全保障関連3文書といわれる「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」及び「防衛力整備計画」が閣議決定されたほか、昨年7月の「2プラス2」共同発表では、南西諸島を含む日本全国における日米合同演習及び施設の共同使用の更なる機会の追求等が示されております。
アジア・太平洋地域の安全保障環境が厳しさを増しているとして、政府は南西諸島への自衛隊の配備を進めておりますが、米軍基地が集中していることに加え、急激な配備拡張による抑止力の強化がかえって地域の緊張を高め、不測の事態が生ずることを懸念しており、ましてや沖縄が攻撃目標になることは、決してあってはならないと考えております。
このため、本県における自衛隊の配備は、在沖米軍基地の整理縮小とあわせて検討することなどを政府に求めており、引き続き、軍転協等とも連携しながら、適切に対応していきます。
特に「特定利用空港・港湾」に関しては、整備に係る予算計上方法や整備後の運用などについて県民に強い不安の声があることから、政府に対し、しっかりとした説明を求めてまいりたいと考えております。
私は、県知事に就任して以降、祖先(ウヤファーフジ)への敬い、自然への畏敬の念、他者の痛みに寄り添うチムグクルを大切にするとともに、「自立」「共生」「多様性」の理念の下、包摂性と寛容性に基づき、様々な施策を推進してまいりました。
今後も、「時代を切り拓き、世界と交流しともに支え合う平和で豊かな『美ら島』おきなわ」の創造を基本理念とする「沖縄21世紀ビジョン」の実現を図り、本県の自立的発展と県民一人ひとりが豊かさを実感できる社会の実現に向けて取り組むとともに、公約の3つの大項目、「県経済と県民生活の再生」「子ども・若者・女性支援施策のさらなる充実」「辺野古新基地建設反対・米軍基地問題」を中心とする各種施策の実現を図ってまいります。
私は、誰もが輝き、誰もが尊重され、そして誰もが希望のうちに喜びを見つけることが当たり前に実現する島、幸福が真に実感できる沖縄を目指し、誰一人取り残さない、沖縄らしい優しい社会の実現に向けて、職員と一丸となって、全身全霊で取り組んでまいります。
第2に、県政運営に取り組む決意を踏まえた特に重要な政策について申し上げます。
世界経済は、持ち直しの動きが続くものの、米国の政策動向、中東地域をめぐる情勢等の影響に十分注意する必要があります。
我が国の経済は、成長と分配の好循環が動き始め、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行に向けた分岐点にあるとされており、政府においては、地方経済の中長期的な成長力の強化に取り組むことが示されております。
本県経済においては、入域観光客数の増加など、コロナ禍からの回復が続く一方で、長引く人手不足や物価高による県民生活や事業活動への影響が懸念されております。
さらに、今後は全国と同様に、本県においても人口減少が進むと推計されております。
このような状況を踏まえ、県としては、引き続き、国と連携しながら、人手不足や物価高への対策等を行うとともに、本県経済の回復を確かなものとし、更なる成長につなげるよう取り組みます。また、人口減少のスピードを緩和させつつ、活力ある持続可能な地域社会を実現するため、地方創生に向けた各種取組を推進してまいります。
令和7年度は、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の策定から4年目を迎えます。引き続き、沖縄振興策を強力に推進するとともに、中間年度にあたる令和8年度に向け、これまでの施策の成果や課題等について、経済団体をはじめとする県内各界各層の意見等を踏まえながら点検・評価を行ってまいります。
SDGsについては、昨年12月にSDGs全国フォーラムを開催し、県内、国内外に向け「沖縄らしいSDGs」の取組を発信するとともに、次世代に繋がる持続可能な社会の構築を図る機会といたしました。引き続き、SDGs達成への貢献と地域課題の解決に向けた施策の一層の充実強化を図ってまいります。
公約において掲げた6つの重要政策のうち、まず、「県民のいのちと暮らしを守る」について申し上げます。
沖縄県の「新型インフルエンザ等対策行動計画」の改定や、医療機関等との協定締結により医療提供体制の確保に取り組む等、将来の新興感染症等発生に備えた感染症対策を強化してまいります。
また、適切な価格転嫁・賃上げに向けた各種支援策に取り組むとともに、成長型経済への移行を見据え、人材投資や生産性向上など、稼ぐ力の強化に資する取組を進めてまいります。
「辺野古新基地建設反対をつらぬく」について申し上げます。
辺野古新基地建設に反対する県民の民意は、過去3回の知事選挙をはじめ、平成31 年2月に行われた辺野古埋立てに絞った県民投票において圧倒的多数で明確に示されており、揺るぎない形で反対の民意が繰り返し示されたことは、極めて重いものであります。
しかしながら、政府は、辺野古移設が唯一の解決策であるとして、令和5年12月28日、沖縄防衛局の埋立変更承認申請に対し、沖縄県知事に代わって承認処分を行う代執行を行い、県民の民意を一顧だにせず工事を強行しております。
私は、県民の願いである普天間飛行場の一日も早い危険性の除去と早期閉鎖・返還を日米両政府に求めるとともに、辺野古新基地建設の断念と対話による解決を求める姿勢を堅持し、引き続き、全身全霊で取り組んでまいります。
「子どもは沖縄の未来」について申し上げます。
社会の一番の宝であるこどもたちが、生まれ育った環境に左右されることなく、生き生きと暮らせる誰一人取り残さないこどもまんなか社会の実現を目指し、こども若者の意見表明や社会参画の取組を推進するとともに、引き続き、県政の最重要課題であるこどもの貧困解消に向けた取組を含む、「沖縄県こども・若者計画(仮称)」に基づく総合的なこども施策を全庁体制で力強く推進してまいります。
「子どもの権利尊重条例」が目指す子どもの権利ファーストの理念の下、こどもの成長段階に応じた切れ目のないきめ細やかな施策を展開するとともに、こどもの権利が侵害された場合の救済機関の設置に向けて取り組んでまいります。
また、学校給食費無償化に向けた取組の第一歩として、中学生の学校給食費の2分の1相当額を全ての市町村及び私立学校等に補助し、保護者の経済的負担軽減に取り組んでまいります。
「安全・安心の沖縄へ」について申し上げます。
米軍基地周辺の河川や湧水等からPFOS等が高濃度で検出されており、米軍基地が汚染源である蓋然性が高いことから、情報の提供、基地内への立入調査、国及び米軍による原因究明調査と対策の実施並びに環境保全に関する国内法の適用や環境条項の新設など日米地位協定の抜本的な見直しを求めてまいります。
県民の命と健康に関わる水道水については、引き続きPFOS等低減化について取り組み、県及び市町村の対策に係る費用負担を国に求めてまいります。また、抜本的な解決に向けて、基地由来の蓋然性が高いPFOS等の汚染原因の特定をはじめ、国や米軍による低減化の対策を実施するよう求めてまいります。
東日本大震災や能登半島地震を教訓とするとともに、昨年6月及び11月の本県における大雨災害など、近年の大雨や台風等の災害が激甚化、頻発化している傾向も踏まえ、知事公室に危機管理課と消防防災対策課の2課を設置し、危機事象発生時及び災害時の体制強化を図ってまいります。
様々な危機事案に迅速かつ的確に対応し、県民の生命、身体及び財産の保護並びに生活の安全の確保ができるよう、災害対策本部機能を備えた防災危機管理センター棟(仮称)を整備します。
離島振興については、離島振興なくして沖縄の振興なしという考えの下、引き続き県政の最重要課題と位置付け、交通・生活コストの負担軽減、防災体制の強化、医療体制の充実・確保など、定住条件の整備のほか、移住定住の促進、関係人口の創出等に取り組んでまいります。また、市町村、関係団体等とも連携し、離島町村等における持続可能な行政サービスの提供体制の構築に取り組みます。
「自然環境と文化・伝統が調和する沖縄」について申し上げます。
直近の、世界の年平均気温が観測史上最高を記録するなど、深刻化する地球温暖化に対し、本県においても、2050年度二酸化炭素排出量実質ゼロの実現に向け、クリーンエネルギーの導入を促進するほか、電動車への補助拡充等に取り組みます。
また、生物多様性に富んだ豊かな自然環境を次世代へ継承するため、自然環境の保護・保全に取り組むとともに、国立沖縄自然史博物館の設立・誘致の早期実現に向けて県全体が一丸となる取組や、世界自然遺産地域の保全と利用の両立を図るための適正管理を推進するほか、昨年12月に成立した動物の愛護及び管理に関する条例に基づき、人と動物が共生する社会の実現のための施策を充実・強化してまいります。
文化と伝統については、琉球王朝時代より培われてきた伝統文化を継承・発展させるため、引き続き、沖縄の伝統文化のユネスコ無形文化遺産登録に向けた取組の推進や、沖縄文化の基層である「しまくとぅば」の保存・普及・継承の促進に取り組みます。加えて、「沖縄県文化芸術振興基金」を設置し、安定的な財源のもと、担い手を育て、文化芸術のさらなる振興・発展を図ります。
また、首里城の復興については、令和8年の正殿完成に向けて、寄付金を活用した製作物の復元や伝統的な建築等に係る人材育成、首里杜(すいむい)地区の歴史まちづくりの推進のほか、安全性の高い公園管理体制の構築等のプロジェクトに引き続き取り組んでまいります。
「限りない沖縄の可能性を未来へ」について申し上げます。
「稼ぐ力」の強化のため、産業DXの推進や、企業連携、スタートアップの育成等によるイノベーションを促進するとともに、国内外への市場開拓や、域内経済循環の拡大、収益力強化を図る施策を総合的に展開してまいります。
また、沖縄観光の更なる振興及び持続可能な観光地の形成に向けて、好調な国内観光需要の継続的な確保、アジア市場はもとより、欧米豪等の海外からの戦略的な誘客及び受入体制の強化に取り組みます。
大型MICE施設整備については、早期の再公告に向けた手続を進めるとともに、地元町村と連携しながらマリンタウンMICEエリアの形成に取り組んでまいります。
食料の安定供給の確保に向けた農林水産物の生産拡大や環境負荷低減に向けた取組を推進するとともに、観光産業等との連携による域内経済循環の拡大に取り組んでまいります。
さらに、県民や観光客の移動利便性を向上させ、交通の空白やストレスがなく、効率的に移動できる環境を構築するため、路線バス等の既存の交通リソースのポテンシャルを最大限に引き出すとともに、鉄軌道とフィーダー交通が連携する有機的な公共交通ネットワークの構築に取り組んでまいります。
特に社会課題となっている中南部都市圏の交通渋滞など、交通に関わる諸問題の解決に向けては、様々な民間団体等の声を取り入れつつ、戦後100 年を目標に、公共交通の将来像を県民の皆様と描く、ビジョンリード型の新たなモビリティ構想の策定に着手するなど、県民の豊かな暮らしの実現を目指してまいります。
職員一人ひとりが仕事と家庭を両立し、安心して働くことができる職場環境の実現に向け取り組むとともに、若手職員をはじめとする職員の「自由」で「独創的」な発想を各種施策に積極的に取り入れ、職員の働きがいに繋げてまいります。また、公務の遂行にあたっては、令和2年2月に策定した「沖縄県内部統制に関する方針」に基づき、職員一人ひとりが関係法令を遵守しながら、適正な行政運営に取り組んでまいります。
第3に、内閣府予算案及び税制改正について申し上げます。
令和7年度内閣府沖縄振興予算案においては、約2,642億円が確保され、沖縄振興公共投資交付金が増額されたほか、航空関連産業クラスター形成促進に向けた事業などが新たに盛り込まれました。
また、令和7年度税制改正においては、沖縄関係税制6項目について2年延長されるとともに、特例措置の一部が拡充されました。
県としては、沖縄振興予算及び税制を積極的に活用し、沖縄の自立的発展と県民一人ひとりが平和で誇りある豊かさを実感できる社会の実現に向けて取り組んでまいります。
このページに関するお問い合わせ
沖縄県 総務部 財政課
〒900-8570 沖縄県那覇市泉崎1-2-2 行政棟6階(南側)
電話:098-866-2095 ファクス:098-866-2658
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。