令和5年度終了の調査研究(感染症研究センター)

ページ番号1029573  更新日 2024年7月4日

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沖縄県産鶏肉におけるLT保有E. fergusonii保菌実態調査

実施期間 令和5年度
背景・ねらい 易熱性エンテロトキシン(LT)は病原性大腸菌の一つである腸管毒素原性大腸菌が産生する毒素です。2022年の調査により、このLTを産生するEscherichia fergusoniiが鶏盲腸便の15.0%より分離されています。しかしながらその病原性、フードチェーンにおける広がりはまだよくわかっていません。
本研究では、沖縄県産鶏肉におけるLT産生E. fergusonii汚染実態を把握し、食中毒のリスクについて考察しました。
また、未知の部分が多い本菌について、ゲノム解析による分子疫学的解析を実施し、その広がりや特徴についても考察しました。
成果の内容・特徴

県産鶏肉60検体を無作為に収集し、本菌の分離、同定を実施したところ、6検体からLT産生E. fergusoniiが分離されました。このことから、ヒトが鶏肉を介してLT産生E. fergusoniiを経口的に摂取しうることが示唆されました。
上記鶏肉由来6株と2022年に分離された鶏盲腸便由来LT産生E. fergusonii4株について、次世代シーケンサーを用いて全ゲノム解析(cgSNP解析)を実施したところ、これら10株が近縁な系統であることが示されました。このことから、鶏の糞便に保菌されているLT産生E. fergusoniiが鶏肉へ拡散している可能性が明らかとなりました。

残された課題 現在のところ、LT産生E. fergusoniiのヒトへの病原性は証明されていません。今回の調査でヒトが鶏肉を介して本菌を摂取する可能性が明らかとなったため、本菌について下痢症患者からの分離等による病原性の確認が必要です。
発表等

1)第44回食品微生物学会. 大阪府. 2023.9.21
 

2)Kakita T, Lee K, Morita M, Okuno M, Kyan H, Okano S, Maeshiro N, Ishizu M, Kudeken T, Taira H, Teruya M, Ogura Y, Akeda Y, Ohnishi M. Isolation and whole-genome sequencing analysis of Escherichia fergusonii harboring a heat-labile enterotoxin gene from retail chicken meat in Okinawa, Japan. Microbiol Immunol. 2024 Mar;68(3):115-121. doi: 10.1111/1348-0421.13115. Epub 2024 Jan 20. PMID: 38244192.

 

沖縄県のブタ、ウシにおけるレプトスピラ保有実態調査

実施期間 令和5年度
背景・ねらい レプトスピラ症は、病原性レプトスピラの感染によって起こる急性熱性の人獣共通感染症で、沖縄県での年間患者報告数は全国の約半数を占めます。経皮・経粘膜感染し、臨床症状は発熱等のインフル様症状から、腎不全、出血、黄疸といった重症となる場合もあります。
ヒトレプトスピラ症の感染機会・職業はニュージーランド、オーストラリアでは畜産業、食肉処理業が主である一方、沖縄県では河川でのレジャーが主で、畜産業、食肉処理業での感染が疑われる症例はほとんど報告されていません。
本研究では、沖縄県におけるブタ、ウシのレプトスピラ感染実態を把握し、畜産、食肉処理業におけるヒトのレプトスピラ感染リスクを明らかにします。
成果の内容・特徴

・繁殖用ブタ50頭中6頭(12.0%)、肉用ブタ100頭中1頭(1.0%)の血清から抗レプトスピラ抗体が検出。
・繁殖用ブタ102頭中6頭(5.9%)の腎臓から病原性レプトスピラ遺伝子が検出。
・肉用ブタ100頭から病原性レプトスピラ遺伝子は検出されず。
・ウシ100頭中3頭(3.0%)の血清から抗レプトスピラ抗体が検出されたが、腎臓から病原性レプトスピラ遺伝子は検出されず。
・ウシ、ブタの腎臓から病原性レプトスピラは分離されず。
・繁殖用ブタの病原性レプトスピラ遺伝子陽性検体について、菌種同定とMLST解析を実施したところ、1検体からL. interrogans ST329が検出。
 ⇒これは沖縄県におけるヒト、マングースから分離された菌株と同じ菌種、遺伝型

 

以上の結果より、ブタはヒトに感染する病原性レプトスピラに感染しており、ヒトへの感染源となりえることが明らかとなりました。特に繁殖用ブタは肉用ブタに比べて感染個体が多い傾向でした。レプトスピラは経皮・経粘膜感染するため、ブタの食肉処理における腎臓の取り扱いには注意が必要です。

残された課題 特になし
発表等 第53回 沖縄県獣医学会. 沖縄県. 2024.7.27(予定)

 

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